不妊症の基礎知識、フーナーテスト、自然周期について
目次
1. 不妊症とは
以前は、2年以上自然な性生活をもっていても妊娠しないカップルと定義されていました。
しかし、通常の性生活をとっていれば1年以内に妊娠するカップルが約90%であることから、挙児を希望されてから1年以上経過しても赤ちゃんができないカップルを不妊症と定義するようになりました。
現在日本では、3組に1組のカップルが不妊症ではないかとの心配をしているといわれています。以前は7.5組に1組が不妊症カップルであるといわれていましたが、今や6組に1組のカップルが不妊症といわれています。
女性の不妊症の原因
- 排卵因子
排卵障害、高プロラクチン血症、多嚢胞性卵巣症候群 - 卵管因子
クラミジア、骨盤内感染症などによる卵管閉塞 - 子宮因子
粘膜下筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮奇形 - 頸管因子
子宮頚部の炎症、子宮頚部の手術 - 免疫因子
抗精子抗体 - 原因不明不妊
不妊症の1/3を占めるといわれている、検査ではわからない原因
男性の不妊症の原因
- 性機能障害
勃起障害(ED)、射精障害、動脈硬化、糖尿病 - 造精機能障害
精巣の精子をつくる機能の低下、精巣上体での運動能獲得過程の異常、精索静脈瘤 - 無精子症
停留精巣の手術後、おたふくかぜの既往、性腺刺激ホルモンの分泌低下
2. フーナーテストとは
フーナーテスト(性交後試験、ヒューナーテストともいいます)とは、排卵が近い妊娠の可能性の高い時期に、夫婦生活をとっていただいたのち、女性の子宮頸管粘液を採取し、400倍視野で運動精子がどのくらい観察できるかをみる簡単な検査です。
1視野あたり、運動精子10匹以上観察できたら良好と判断。
それでも妊娠しなかった場合、何らかの不妊因子があると判断されます。
フーナーテストの結果による治療方針の決定
一般的な不妊治療のステップアップとは
一般的には、タイミング法で妊娠しなかった場合、次は人工授精が行われることが多いです。人工授精で妊娠しなかったら、その後体外受精にステップアップします。
しかし、フーナーテストが良好なカップルに対する人工授精のメリットは実は多くありません。フーナーテストが良好、つまり精子は子宮に十分入っている→洗浄した精子を子宮内に注入するだけの人工授精はあまり意味がないといえます。
3. 当院での治療
まず一般的な不妊症の原因がないか検索します(超音波、卵管水検査、感染症検査、ホルモン検査)。異常があればそれに対する治療を行います。
原因不明不妊症の場合、フーナーテストを行いフーナーテストが良好であれば、3周期から5周期タイミング(年齢にもよる)を行います。妊娠が成立しなければART(体外受精)をおこないます。
フーナーテストが不良であれば、男性側の精査をしたのち必要なら3~5周期人工授精を行います。妊娠が成立しなければ体外受精を行います。
自然周期とは
周期的に月経があるということは、自然に排卵が起こっていると考えられます。きちんと排卵がおこっているかたに排卵誘発剤(クロミッドやHMGなど)を投与することはあまり意味がありません。経済的なデメリットや副作用のリスクもあります。
自然周期とは、ご自分の排卵のちからを利用して、できるだけ薬を使わずに治療する方法です。自然の排卵なので、体に負担をかけることがありません。
自然周期がいいと言われる理由
月経が順調にある=排卵はきちんとおこっている。
自然に排卵があるのに、クロミッドなど排卵誘発剤を使う必要はありません。
クロミッドの副作用
不妊症であるから必ずしも薬が必要ということにはなりません。
できるだけ自然にちかい形で、不妊原因だけを取り除く治療が大切なのです。